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これまでのウイルス研究について

ウイルス研究 ④

「海綿に含まれる onnamide A (オンナミド A) が新型コロナウイルスの感染を抑制することを発見しました2024年 5月 

Yasuhiro Hayashi, Nanami Higa, Tetsuro Yoshida, Trianda Ayuning Tyas, Kanami Mori-Yasumoto, Mina Yasumoto-Hirose, Hideki Tani, Junichi Tanaka, Takahiro Jomori

Onnamide A suppresses the severe acute respiratory syndrome-coronavirus 2 infection without inhibiting 3-chymotrypsin-like cysteine protease 

The Journal of Biochemistry, 176, 197-203, 2024


 沖縄県の海綿より新型コロナウイルス (SARS-CoV-2) の感染を抑制する化合物 onnamide A を発見しました。琉球大学 理学部 の田中先生、城森先生が作製された沖縄県の海洋生物ライブラリーを用いて、抗ウイルス活性を持つ抽出液のスクリーニングを行いました。その結果、沖縄県 恩納村 万座で採取した Theonella swinhoei 抽出液に高い抗 SARS-CoV-2 活性を持つことを明らかにしました。城森先生グループにより海綿抽出液を液体クロマトグラフィーで分画し、林研究室では分画サンプルの抗ウイルス活性を測定しました。その結果、onnnamide A を抗ウイルス活性の活性本体として同定しました。​興味深いことに、onnamide A はアルファ株、デルタ株、オミクロン株といった様々なSARS-CoV-2株に抗ウイルス活性を持つことが分かりました。 

 海外の研究者により、onnamide A はSARS-CoV-2 のメインプロテアーゼ酵素(3CLPro)と結合し、感染を抑制することがパソコンを用いたシミュレーションより予測されていました。しかしながら、実際に 3CLPro を onnamide A で処理しても、その酵素活性は阻害されないことが分かりました。この成果は、シミュレーションの予測では本当のことは分からないという、実際に手を動かして研究成果を出すことの重要性を意味しています。現在までに、私たちは、onnamide A がウイルスの侵入過程を部分的に抑制することを明らかにしています。その作用機序を明らかにすることが今後の課題です。​​

 本研究は琉球大学の田中先生・城森先生、東京理科大学の安元先生、一般社団法人トロピカルテクノプラスの廣瀬先生、沖縄県工業技術センターの荻先生との共同研究であり、沖縄イノベーション・エコシステム共同研究推進事業(大学等共同研究推進)の助成を受けたものです。

Graphical Abstracts_20240217.tif

ウイルス研究 ③

N-(4-hydroxyphenyl)retinamide (4-HPR) は

新型コロナウイルス SARS-CoV-2 感染を抑制する

4HPR HP用_2022.1.26..tif

 中国の武漢で発生した重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)はパンデミックを引き起こしています。スフィンゴ脂質は様々なウイルスのライフサイクルに関与することが知られていますが、SARS-CoV-2 感染に関わるスフィンゴ脂質は不明です。そこで、SARS-CoV-2 感染におけるスフィンゴ脂質の機能を明らかにすることを目的とし研究を行いました。細胞膜融合アッセイを用いて SARS-CoV-2 のスパイクタンパク質を介した膜融合を抑制するスフィンゴ脂質代謝酵素の阻害剤を調べた結果、ジヒドロセラミドデサチュラーゼ (DEGS1) の阻害剤である4-HPR で処理した細胞において細胞膜融合が抑制しました。さらに、4-HPR は膜融合のみならず 臨床分離した SARS-CoV-2 感染も抑制することが分かりました。

 本研究は4-HPRは抗ガン剤としての臨床研究が進んでおり、肺癌、膀胱癌、前立腺癌などの臨床データおよび安全性のデータが蓄積されており、抗 SARS-CoV-2 剤として早急な実用化が期待できます。また、私たちが発見した抗SARS-CoV-2感染作用のみならず、他の研究グループらにより4-HPRはCOVID-19におけるARDSのサイトカインストームを抑制する機能を持つことが示唆されています(Orienti et al, 2020)。これより、4HPRは抗ウイルス剤そしてサイトカインストーム抑制剤としてCOVID-19 重症化治療への適応が期待できます。

 本研究は国立国際医療研究センターの前田先生・土屋先生、東京大学の井上先生・合田先生・山本先生、帝京大学の山下先生・佐々木先生との共同研究です。​(Hayashi et al., Journal of Virology, 2021)

 また、本研究内容は毎日新聞の全国紙の朝刊(2021年9月9日)に掲載されました。

ウイルス研究 ②

ヒト免疫不全ウイルス (HIV) の補助受容体 CXCR4 を

標的とする新しい抗 HIV 剤の開発

HIV HP用_2022.1.26..tif

 HlVの感染初期にはコレセプターとしてCCR5を使用するR5 HIVが主体ですが、感染後期にはCXCR4を使用するX4 HIVが出現することで、エイズ発症に至ると考えられています。そこで、エイズ発症を防ぐために、CXCR4を標的とした薬剤を探索しました。

 CXCR4 アラニンスキャニングの結果、CXCR4 の Asp97 および Glu288 アミノ酸残基が HIV 感染に重要であることを明らかにしました。CXCR4 モデル構造を作成した後、CXCR4 の Asp97 および Glu288 を介して結合する低分子化合物を探索したところ、CX6 を候補化合物として見い出しました。重要なことに CX6 は 培養細胞レベルでHIV 感染を抑制しました。これより、私たちは、CX6 が CXCR4 を標的とする新規な抗 HIV 剤になりうることを明らかにしました。本研究はアメリカ国立生成研究所の満屋先生の研究室で行われた研究です (Deb, Maeda, Hayashi et al., Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 2015)

ウイルス研究 ①

​スフィンゴミエリン合成酵素 (SMS2) は HIV と宿主細胞の膜融合の効率を促進する

4HPR HP用_2022.1.26..tif

 エンベロープウィルスは、宿主細胞と自身の脂質二重膜を融合することで宿主細胞に侵入することから、脂質代謝酵素はウィルス感染に関与することが考えられます。そこで、HIV と宿主細胞との膜融合に関わる脂質代謝酵素を探索しました。
 その結果、スフィンゴミエリン合成酵素 SMS2 を発現する細胞は HIV エンベロープを介した膜融合の効率が促進することが分かりました。免疫沈降実験より、SMS2 は HIV 受容体 (CD4) と補助受容体 (CCR5/CXCR4) と相互作用し、形質膜上で共局在することが明らかになりました。また、HIV エンベロープ発現細胞で刺激した SMS2 発現細胞は、チロシンキナーゼ Pyk2 のリン酸化が一過的に増加し、かつ、その細胞間接点においてアクチン重合の増加が観察されました。以上の結果から、SMS2 は形質膜上で HIV 受容体・補助受容体と相互作用することで、Pyk2シグナルを介したアクチン重合を一過的に亢進し、HIV エンベロープを介した膜融合を促進することが分かりました。
 本研究は国立国際医療研究センターの土屋先生、帝京大学の山下先生・佐々木先生との共同研究です。(Hayashi et al., Journal of Biological Chemistry, 2014)

©2022 by 林康広 研究室。Wix.com で作成されました。

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